Tiger II

Meng ModelのティーガーIIに同社別売インテリアセットと連結可動履帯を組み込んで、カットモデルに仕立てみました。自分が子供の頃、デパートのプラモデル売り場にビッグスケールのカットモデルが飾ってあり憧れの存在でした。その作品をオマージュして制作しました。

カットモデルにしても意外と車内が見えないので、砲塔天板や機関室上面パネルを取り外せるようにしています。カットモデルにするための切り出しは超音波カッターを使用しています。

砲塔天板や操縦手ハッチのあるパネル、機関室パネルを取り付けた状態です。当然、車内は陰になり暗くて良く見えませんね。LED照明でも仕込むべきでした。カットした切り口は溶断したような質感を活かしてあまり仕上げず、断面を赤く塗っています。

キットは車体全長がドラゴンのキットと比較すると２ミリ程長いです。そのため非常に迫力のある姿を表現できます。しかし、２ミリの違いは大きいですね。どちらが正確なのかよくわかりませんが、機関室周りは両社同じ寸法です。寸法の差は砲塔前方の操縦手ハッチのあるパネルと、そのパネルから前面装甲上端までに２ミリ分の違いがあります。独自に入手した実車寸法と比べると、どうもドラゴンの方が実車に近い値のようです。操縦手ハッチのあるパネル長さはドラゴンは短め、Mengはほぼ正確、そのパネル前端から前面装甲前端までの距離は、ドラゴンは短め、Mengはわずかに大きめなようです。ただ参照した計測値の信頼性もよくわからないのであくまで参考です。(4/18文章修正）

キットは1944年8月頃の生産車を再現しているので、工場迷彩が始まった頃になります。今回は503重戦車大隊が9月に再編成されて補充を受けて配備された車両を想定してみました。カットモデルということで、あまりウェザリングはせず博物館の展示車両っぽく仕上げています。

今回使った塗料はタミヤラッカー系のLP-55ダークイエロー２とLP-56ダークグリーン２，LP-57レッドブラウン２です。ダークイエロー２は手持ちが少なかったので、タミヤの色調を参考に明るく調色したMr.カラーを使いました。38番＋62番＋33番（隠し味に310番を少量入れてもよいでしょう）です。

工作過程を振り返ります。車体を組み上げると見えなくなる部分が多く、記録として撮影したもです。見えないところもちゃんと再現できるキットですから、塗装もちゃんと塗り分けています。レストア中の実車写真を参考にオリジナルの配色を尊重しつつ多少模型映えを考えてアレンジしています。参考にしたのは「SUPERKING」本で、題材にしている1/16 フルディテールモデルの作品は、まさに立体資料と呼べる内容です。

機関室隔壁まわり。彫刻されたディテールを丁寧に塗り分け、墨入れして立体感を引き立てました。この作品では工作と塗装のしやすさを考慮してアッセンブル単位で塗装して、組み立てています。接着代にはできるだけマスキングして塗料を乗せないようにするのがポイントです。

トランスミッションまわり。小さなノブが折れてしまい真鍮線で作り替えています。配線はカーモデル用のビニールケーブルを利用しています。実車の腰から下は全てレッドプライマー色と思われますが、流石に単調なので、砲塔旋回動力用ギアボックスとか電装品用ボックスはRAL7006や7009あたりのグレーにしてみました。

クーリングファンはアレンジして銀色にしましたが、レッドプライマーが正しいでしょう。ラジエターが黒なのは実車もそうらしいからです。燃料タンクはプライマー色に変化を付けてみました。

マイバッハエンジンです。組付けると全く見えなくなり残念ですが、とても良く再現されています。ドイツ戦車のエンジンはジャーマングレーのようなダークグレーで全体が塗られています。補器具やパイプの接続バンドが金属色なので塗り分けてアクセントにします。エアフィルターは白色で塗られていますが、RAL1001を想定した色で塗りました。

砲弾ラックには多数の砲弾が載ります。色調に変化を付けてコツコツ塗り分けました。薬莢はスチール製、ラッカーコートしてグリーンっぽいものがあったのか不明。なので、今回はラッカーコートしてグリーンっぽいものは含ませていません。

シャシーに各アッセンブルを組付け。無線機まわりはアイキャッチになるので、配線などディテールアップしています。無線機ラックのパーツは上面が再現されていないのでラックに無線機が収まっている様子を作り込みました。

主砲を載せる前の砲塔まわり。各パーツの位置決めが難しそうですが、ストレートに組むだけでピタリと収まります。今どきの3D設計なのでしょうね。

主砲と砲弾ラックを組付け。メカメカしい姿がカッコ良いですよね。閉鎖機まわりはナチュラルメタルの金属色なので、Mr.メタルカラーで塗って磨き上げています。キットの防楯はセンス無いディテールをしているので、それらしく加工修正しています。

主砲はRAL1001で全体が塗られていますが、砲尾右側面は無塗装でナチュラルメタルの金属色です。これ、垂直閉鎖機タイプのドイツ戦車車載砲あるあるです。

車内アッセンブルを組付けました。起動輪と転輪はディテールが似ていないので、タミヤのヤークトティーガーから流用しました。タミヤの転輪は外側のディスク２枚の間隔が内側に来る転輪ディスク２枚よりも広くなっています。これは複合転輪に履帯センターガイドをピタリとフィットさせるための、「組み立て易さ」のタミヤなりの配慮と思われます。今回は見えないので無視していますが気になる方はアフターパーツを利用されると良いでしょう。

カットのある車体上部側面左側は装甲厚を再現するため、内側にプラ板を貼っています。そのため砲弾ラックが車内内側に押し出されてしまうので、左砲弾ラックは幅を狭める必要があります。そこで、左砲弾ラックは砲弾を載せるアーム部分を作り直して、砲弾搭載ピッチを詰めてあります。

ツィンメリットコーティングはMr.造型用エポキシパテ エポパPRO-Hを使用しています。このパテは薄く伸ばしやすくお薦めです。パターン処理はモデルカステンのコーティングローラーで施しました。この写真ではサイドスカートのある面にコーティングをしていませんが、実車にはコーティングがあるので、後から修正しています。

キットのマズルブレーキは左右貼り合わせタイプなので、合わせ目が出ないよう仕上げています。特に砲口の円が正円になるよう、先端部分にプラパイプを埋め込んで正円を再現しています。

キットにはアルミ砲身が付属していたのですが、2段スリーブの先端円周面にあるボルト穴が無いので再現します。幅広い溝があるので、プラパイプを切り出して嵌めるようにして細い溝を残して埋めます。溝の中心を狙って穴を開けるのですが硬いアルミに弾かれて柔らかいプラパイプへ穴が寄ってしまいました。まあ、こんなもんで良しとしました。ボシュライトはマウスモデラーの製品に交換してあります。

各部のディテールには最近流行りの3DPパーツを利用していますが、概ね樹脂の粘りがなく、蝶ネジとか作業中に触れると直ぐに折れて紛失してしまいます。なので、何度か補修工作をすることに。3DPパーツを取り付けたら、取り扱いは本当に慎重にしましょう。

ジャッキはROCOM MODELの製品を使用しましたがハンドル部分が折り畳み式ではないため、可動部をそれらしく自作しました。筒形車間表示尾灯は市販3DPパーツもあるのですが、どうも貧弱に見えるので自作しました。排気管の分割部分の段差を表現し、ボルトも植え替えて強調させました。

カットアウトする範囲を考えたときに、大胆に大きく切らないと内部は見えそうもないと思いましたが、そうすると車体の輪郭が無くなり外観をイメージ出来なかったり、強度不足になることが考えられました。そこで、カット範囲は狭くなりますが、車体や砲塔の輪郭稜線部分は残すようにカットしました。結果、内部の見え難さはあるもの、強度的に充分なものになったようです。内部の見え難さは砲塔天板や操縦手天板を外すことで補います。

ティーガー２は外装ディテールが少ないので、細かいところに集中して拘れます。今回はジャッキ台のハンドル金具について徹底再現し、自分史上最も正確な形状を再現しています。

今回、ウェザリングは少な目にしていますが、排気管の焼け錆は表現しています。今回、塗り方を変えてみたのですが、あんまりリアルでは無いですね。従来のアクリラガッシュを使う方法の方が良かったです。

三色迷彩はエアブラシの細吹きでボケ足が短くなるよう意識して塗りました。霧状に周囲へ粒子が飛んでしまうところは、後からベース色を重ね塗りしてはみ出しを消し、改めて輪郭を塗りました。車体側面の上方には暗い色でウォッシングして下方へ向けて明るい色にしています。サイドスカートは車体側面に接している面はウォッシングで暗くフィルタリングし、斜めの広い面はウォッシングせず塗装色のまま。垂直面はウォッシングで暗くフィルタリングし、Ｒのところでウォッシング液が溜まるようにして暗いラインを描いています。最後にエッジやＲにドライブラシでハイライトを薄く足すことで立体感を強調しました。

取り外せるパネルまわり。裏側は特にディテール再現をしていませんが、押し出しピン跡が盛大にあるので埋めたり削り取りはして仕上げています。機関室ハッチのあるパネルは裏側に閉じたハッチを受けるフランジをプラ材で作っています。実車もこんな感じですね。

ラジエターにパイピングを追加して、燃料タンクにもパイプを取り付けました。ただ、高さを押さえないと被せるパネルと干渉してしまうので、工作中に確認・調整が欠かせないところです。

砲塔マーキングは503重戦車大隊の44年9月再編成時のデザインを再現しました。有名な閲兵式の動画（12：22あたり）に「312」号車がチラリと写っていますが、特に忠実再現とかはしていません。予備履帯のウェザリングは油絵具です。連結ピンにはダイソーの手芸売り場で入手した「Tピン」というものを加工して使いました。

MG34の銃身はディテールアップパーツに置き換え、Mr.メタルカラーで塗装後、油絵具のブルーでフィルタリングして磨いてあります。フロントフェンダーはスカート部分が別体なのですが、キットでは一体成型で分割線がなく、溝線を再現するためにキットパーツをレザーソウで分割してから切り口を仕上げて再接着して再現しました。

キットの無線機はまずまずの出来ですが、配線プラグとかは無いので、プラグを自作して配線を追加しています。斧の柄の木質の質感表現とか、この写真ではリアルですけど、生で作品を見ると淡泊に見えると思います。でもそれが1/35のスケールの姿なんですよね。

メーターのデカールがずれちゃってますね。失敗です。貼り付けたときの位置合わせで良く見えていなかったのかな。最近、そういうミスが増えてきています。老眼でちゃんと見えていないのかなあ。

砲塔給弾用ハッチ内側にはハンドルをカバーするようなパーツがあり、可動するようにしました。キットにモールドされているヒンジに0.2ミリドリルで開口し0.1ミリ真鍮線を通しています。カバーは薄板で出来ているように内側を削り、ちょっとしたディテールも追加しました。あと、実車写真を参考に砲塔側面に対空機銃マウントを吊るしてみました。

ハッチやキューポラまわりには少しチッピングをしました。装填手ハッチはキットのモールドを活かし、アンダーカット部分をチゼルやナイフで彫り込んで立体感を増してやりました。キューポラの対空機銃架レールは固定している溶接線を伸ばしランナーで表現しています。

別売の専用連結可動履帯はスライド金型でアンダーカットまで彫刻がありなかなか良いのですが、連結する金属ピンを圧入すると樹脂が弱くなり、塗料溶剤を吸って割れてしまうようです。そうなるんじゃないかと思い、エナメル溶剤は使わなかったのですがダメでした。ラッカー系で下地を塗装して、ピグメントを水性アクリル溶剤で定着させて拭き取ると、簡単に連結部が壊れてしまいます。なので、慎重に巻きつけて流し込みタイプの瞬着で固定しました。

今回、車体への泥汚れ表現はしていませんが、履帯だけはウェザリングを強調して現実感を演出しました。普段は走らせず、たまに走行したあとの感じですね。

履帯の長さですが、左右でコマ数を変えています。本当は同じだと思いますが、どうしても伸び縮みが出てしまうんですね。２コマ１セットなので、合わせられないと大きな差に。誘導輪の位置調整でなんとかそれらしくなりました。

ティーガー２、デカいけど長砲身だしカッコ良いですよね。ボービントンで実車を観ましたが巨大でした。こんなもんが動くのかと。実戦ではあんまり活躍してなくて、故障で自爆処分して失われていくイメージです。まあ、こんな巨大で重量のあるものが頓挫したらどうしょうもないわなと実車を前にして思いました。

今回はバトルダメージも入れていませんので、次にティーガー２を組むときは、歴戦の勇士っぽく仕上げたいですね。長年、作りたいと思っていたカットモデル、インテリアの工作がなかなか面白くて楽しかったです。